PORTFOLIO #006

andante box

敷地面積
850.25㎡ / 257.2坪
建築面積
65.99㎡ / 19.96坪

北に閉ざしたエントランス
ドアを開けば、家族だけの別世界

3つのフロアレベルに分けられた、間仕切りのないおおらかなワンルーム。キッチンから、どこまでも見渡せるひとつ屋根の下、暮らしのしぐさが響き合う、まるで森の音楽室のようなモリノイエ。北側の接道面に対して、あえて閉ざしているが、一歩中へ入ると、そこには家族だけが知る美しい南の森が待っている。

敷地面積
850.25㎡ / 257.2坪
建築面積
65.99㎡ / 19.96坪

あえて閉ざした北側の外観とは裏腹に、エントランスのドアを開けば、南の森に包まれたおおらかなワンルームが待っている。エントランスは、靴を脱ぐスペース程度に考えられていて、マットが一枚置いてあるだけ。そのエントランスと同じフロアレベルにキッチンの作業場がある。15㎝高くなっているダイニングには、半円のキッチンカウンターをしつらえた。料理をしながらでも、家族と目線が合う食卓は、料理好き夫婦の希望をかたちに。ハンス・J・ウェグナーの名作Yチェア、子どものお気に入りトリップトラップで揃えた4席が家族の特等席。
 
そんなキッチンカウンターをステージに、3つのフロアレベルをしつらえた空間。半地下のような1stフロアにはベッドルームと書斎、3rdフロアには畳のゲストスペースをもうけた。
 
南の森にダイナミックに開いた窓たちは、十分な日射を取り込み、森の中にリビングがあるような一体感を生む。偶然の賜物ではなく、この土地と周辺環境を読み、森に敬意を払い、窓の位置を誠実に設計。

3rdフロアの畳ゲストスペース。片流れ屋根の頂点下を切り出した出床窓は、森との一体感をいっそう引き立てる。光が斜めに差し込み、空間全体に明るさをもたらす。
手摺り下のヨコ格子の角材を45度回転させたことで、繊細なラインを描き、軽やかな印象を残した。

ゲストスペースでのひとときは、まるでツリーハウスで巣ごもりをしているかのよう。
 
植物たちが大好きな東の庭から望む、浮遊感のある出床窓。窓から窓へ緑の景色が抜け、森に溶け込んでいる。

リビングから、深い蒼に染められた朝の森を望む。
 
薪ストーブの火を前に、呼吸、鳥の声、薪の弾ける音、いくつもの響きに耳をすませば、五感が澄み渡っていく。

設計プランの話し合いを重ねていく中で描いた、ファサードのスケッチ。建主夫婦の想いを汲みとり、軽井沢の土地を読み、この場所での「ちょうど良い」森暮らしを想像するひとときは、私たちにとっても、またとない愉しい時間である。記念にお渡ししたスケッチを大切に飾って頂いていることを知り、嬉しさが込み上げてきた。

南の森に開いた外観とは対照的に、背の高い木々に溶け込み、静かに佇むエントランスのありさま。ドアを開け、室内に踏み込んだ瞬間に、どんな印象を残すように設計するか。あえて北側に閉ざしたエントランスのしつらえが、ドアを開けた先に広がる森との対峙に、強弱をつける。そこで待つ美しい森に抱いた驚きと感動が、消えない記憶となるように。