PORTFOLIO #090
軽井沢の山荘|case i
森の山荘の
質実な侘び寂び
「多くを求めない」というよりも、四季折々の自然の美しさを実らせた小さな花や、わずかな森のうつろいに心を留めていたい。そんな想いでしつらえた、自然とひとつになる森の山荘。
PORTFOLIO #085
冷たい空気が澄み渡る朝。ベッドルームから薪ストーブのあるリビングへ下りる途中、窓に描かれた絵画のような空のグラデーションと、樹木の影と霞んだ山影のコントラストが目をうばう。美しい光はやがて、吹き抜けからリビングへ降り注ぎ、薪を焚べながら読書に勤しむ建て主を照らしていく。
エントランスがある西のファサードは、コンパクトな平屋のような佇まい。一方で東には、急傾斜を活かして、朝陽と山影がパノラマに広がる展望台のような居住空間を設計。
カーポートからつながるエントランスのアプローチ。まるで湿地の遊歩道を歩くような動線。
東からの光が差し込む土間エントランス。写真正面のロフト下に、居住空間が広がる。
平屋のようなファサードとは対照的な、おおらかなリビングのありさま。エントランスから階下へ下りると、吹き抜けから注ぐ光に包まれる。
東に傾斜した高台の頂に居住空間をしつらえたことで、山影と対峙するプライベートな眺望をとらえた。
光を受ける場所と受けない場所にメリハリをつけたリビング。森の眺望に大きく開いた窓際に対して、レンガタイル上部の窓から光を取り込むソファの空間は、木陰の下で羽を休めるような場に。
リビングからキッチンを見る。腰より下に収納をまとめた、簡潔で圧迫感のないキッチンには、調理と食事を向かい合わせにするカウンターを設計。キッチン横の小窓は、空間に抜けをつくるとともに、調理の熱やにおいを流す役割にも。階段下は食料庫として機能している。
階段を下りた先に、バスルームとトイレを設置。温水暖房の上に石畳を敷いた床が、足元をじんわり温めてくれる。写真左奥のドアからウッドデッキへ出れば、露天風呂がある。
窓際にカウンターをしつらえた10帖ほどのプライベートライブラリーは、エントランスの北側に増設。本棚が整然と並び、天窓から自然光がもれる。太陽の流れとともに、読書にふける愛読家の憩いの空間。ベッドが配置され、ゲストルームとしても使用されている。
エントランスから西側に隣接するプライベートルーム。奥にいくにつれて低くなる天井は、巣ごもりをするような安心感を生む。外の植物を照らす陽が反射し、やわらかい光が朝を知らせる。