森にもっていきたい二つのもの #2

自転車とタオル

2018.05.17

森に行って何をするか……自体がもはや愚問だろうか。というほど、森に行けば、したり顔で「何もしない」と言うのが、ひとつのおきまりになっている。ただ、本当にそうだろうか。ずっとモリノイエにこもりきりで本を読む、茶や酒を嗜む、だけではやっぱりいつか飽きが来る。何日も滞在するならなおのこと。じゃあ、何をするか。おおむねの場合「じゃあ、温泉でも」となるに違いない。
 
うれしいことに軽井沢には、星野温泉や千ヶ滝温泉といった、いくつかの体にいい温泉がある。そりゃ草津や別所と比べて名も規模もかなわないが、肌当たりの柔らかな、さっぱりとした湯が楽しめる。足は車を使うのもいいけれど、ここはあえての自転車を選びたい。そして軽くて薄い、大きくも小さくもないタオルを首にひょいと引っ掛けて、何枚かのお札をポケットに突っ込み、手ぶらで気ままに出かけるのだ。
 
ゴロゴロと大きな荷物を転がす観光客を横目に、チリンチリンとベル鳴らし、ほんの少しの優越を感じつつ、小慣れたふうで温泉へ。たっぷりの湯にどぷんとつかり、ぷはっとひとつ息をついたなら、あまりの長湯は野暮。さっさと上がって、さぁ戻ろう。
 
自転車で行く、その醍醐味がより発揮されるのは帰り道だ。濡れた髪が森の風で軽くなり、ペダルを漕ぐ足も、心も応じて軽くなる。坂を越えた向こうには、愛するモリノイエが待っている。