軽井沢別荘の歴史06「建築は詩」

2019.10.22

モリノイエ軽井沢 編集室

表参道と軽井沢のアトリエで、別荘や住宅の建築設計を中心に活動する私たち〈モリノイエ軽井沢〉は、“都会暮らし、森暮らし。”という新しい日本の暮らし文化をつくることを大切に、連載「軽井沢別荘の歴史」で、軽井沢の別荘建築や山荘暮らし、建築家の図面や作家の芸術作品、写真集などを紹介していきます。

軽井沢別荘の歴史06
「建築は詩」
建築家 吉村順三のことば100
 
永橋爲成(監修)
吉村順三建築展実行委員会(編)
彰国社(2005)

別荘建築には、夢があります。一生の中でも何番目かに楽しい時間でもあります。
それは、建て主と同じように、建築を考える私たちにとっても、楽しい時間であり、これからさらに自分の建築観を深めていきたいという建築家と交えたい喜びです。
 
では、どんな建築を目指すのか?
 
それを知るために、建て主の声は当然のことながら、建築の歴史や偉大な建築家の考えに教わることが、実にたくさんあります。

とくに、家族との時間を思い、軽井沢の別荘で過ごした建築家の吉村順三の言葉には、「建築とはなにか?」「森に暮らすとはなにか?」を知る糸口があります。
 
なぜなら、1908年に東京に生まれ、関東大震災、第二次世界大戦、そして日本の高度経済成長の真っ只中で、日本の建築を考えてきた建築家だからです。
 
これからの日本を思う時、吉村順三の建築観を、今一度、振り返ってみたいと思うのです。

建築設計のマニュアルではなく、「建築は詩である」と語った吉村順三の建築観を知ることができる一冊。本書は、これまで数々の書籍や雑誌などで残してきた吉村順三の言葉がまとめられています。
 
読む度に、一重では語りきれない、数々の問いを投げかけてくれます。
ここでは、いくつか抜粋してご紹介します。

近代建築
 
「やはり現代建築をどんどんやっていかなければ...。昔の建築に懐古趣味ですんでいるわけにはいかないわけです。それから人間というものは絶えず新しい刺激を受け、新しい発展というようなものを体得することが楽しいわけですからね。どうしても近代建築を僕ら、やらなければいけないでしょう。だけれども、それは建築の基本から出発した近代建築であるべきで、形だけで近代的であっても、そこに何も近代的な、精神的要素がなければ、ちっとも近代的じゃないと思うのです。(p.68)」

ヒューマンな町
 
「昔の下町では、隣の人がこうやったから、自分の家もこうやろうって気持ちがあったんだよ、そういうエチケットが。みんなが持っていたんでしょう。それがあったから近所の人と気持ちのいい付き合いや気持ちのいいヒューマンな町ができてたんだよね。人のことなんか考えないで勝手気ままに建てるってことは、要するに、そういう気持ちがないからだよ。(p.50)」

「建築家として、もっとも、うれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。
日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感ぜられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか。(中略)つまり計算では出てこないような人間の生活とか、そこに住む人の心理というものを、寸法によってあらわすことが、設計というものであって、設計が、単なる製図ではないというのは、このことである。(p.4)」

ーー「では、自分なら?」
新たな問いが生まれていきます。
建築のことのようで、近代の日本を生きるすべての人へのメッセージでもあるように思います。