軽井沢別荘の歴史05「ブラタモリ」

2019.10.04

モリノイエ軽井沢 編集室

表参道と軽井沢のアトリエで、別荘や住宅の建築設計を中心に活動する私たち〈モリノイエ軽井沢〉は、“都会暮らし、森暮らし。”という新しい日本の暮らし文化をつくることを大切に、連載「軽井沢別荘の歴史」で、軽井沢の別荘建築や山荘暮らし、建築家の図面や作家の芸術作品、写真集などを紹介していきます。

軽井沢別荘の歴史05
「ブラタモリ」
監修:NHK「ブラタモリ」制作班
角川書店(2016)

今回の「軽井沢別荘の歴史」では、これまでの建築色とは少し変わった角度から、一冊の本をおすすめ。本書は、NHKの人気番組「ブラタモリ」で収録された軽井沢の歴史が紹介されています。

大きな2つのメインテーマ、
「軽井沢はなぜ、日本一の避暑地になった!?」
「軽井沢への道 人はどう峠を越えてきた?」
 
に沿って、タモリさんと桑子アナが、軽井沢を散策。〈旧軽井沢銀座通り〉や〈軽井沢ユニオンチャーチ〉をはじめ、碓氷峠の〈鉄道文化むら〉などを訪れ、軽井沢に詳しい研究者たちからこの地の歴史を学んでいきます。

・江戸時代に碓氷峠の宿場町として栄えていたこと
・明治に入ると、新道開通に伴い、宿場町としての活気はゆるやかに
・ところが、明治中頃からは、カナダ人宣教師のアレキサンダー・クラフト・ショーが別荘を建てたことをきっかけに、多くの外国人が避暑地として、軽井沢の涼風を求めるようになったこと
 
などの軽井沢の軌跡が、ウィットに富んだタモリさんの視点とともに、面白おかしく紐解かれていきます。

なかでも特に興味深いのは、「軽井沢が避暑地として愛された理由は、先人の転地療養の考えから」という解説です。
 
話は「そもそもなぜ、避暑地・軽井沢の父と言われる宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショーは、軽井沢を選んだのか?」というなぞから始まります(以下、本書p.66-67参照)。

宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショーは、たまたま軽井沢を気に入ったわけではなく、元を辿れば、その「モデル」があったと考えられるそう。

そのモデルのひとつが、「ヒルステーション」。アジアを植民地化していった西欧人にとって、高温多湿なアジアの夏は耐えがたいものだったようで、都市から遠くないところで、標高が高く、冷涼な場所を探して、「ヒルステーション」という高原避暑地をつくっていく慣習があったそう。例えば、インドのシムラやダージリン、マレーシアのキャメロンハイランドなど。

もうひとつのモデルが、アメリカにルーツをもつ「サマーキャンプ」。キリスト教徒が、自然豊かな島や森に集まり、避暑という目的と社交の機会として、集っていたそう。

このどちらのモデルも知っていたショーが、それらに適した場所を日本の中で探していたと考えられると言うのです。

また時代背景としても、明治の日本は西洋文化の導入に熱心だったことから、大気療法に基づいた西洋の「療養」を深く学んだとされています。
 
ショーが軽井沢に別荘を建てた1888年以前から、軽井沢には、軍の療養所が多く開設されていました。日本人で初めて軽井沢に別荘を持った八田裕二郎という人物も、海軍の軍人で、海外経験も豊富だったため、ヨーロッパの山岳に置かれた高原療養所の存在を知っていました。そして、軽井沢に別荘を建てたあとは、「軽井沢の空気は健康によい」と軽井沢への転地療養を人々に勧めていたと言われています。

ーーこうして、軽井沢の森は、人々の五感にとって心地よい土地として、自然と見出されたわけです。それは科学的に証明されるようなものではないかもしれませんが、先人たちの経験がたしかに感じた軽井沢の可能性だったと言えるでしょう。
 
このほかにも、火山の歴史や軽井沢がブランド化された背景、日本最大級の勾配に鉄道がどう挑んだのかなど、ユーモアたっぷりに軽井沢の魅力を伝える本書を片手に、秋の軽井沢を散策してみてはいかがでしょうか。

本書で取材されているいくつかのスポットはこちら。
 
〈旧軽井沢銀座通り〉
〒389-0102 長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢旧軽井沢541
https://goo.gl/maps/etCL6FEcg2Zm6oUE6
 
〈軽井沢ユニオンチャーチ〉
〒389-0102 長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢旧軽井沢 大字軽井沢862
https://goo.gl/maps/DXwjYFJsL7heCMdR6
 
〈八田別荘〉築1893年 日本人で初めて軽井沢の別荘を建てた八田裕二郎の別荘
https://www.town.karuizawa.lg.jp/www/contents/1465353910183/index_k.html
 
〈碓氷峠鉄道文化むら〉
〒379-0301 群馬県安中市松井田町横川407-16
https://goo.gl/maps/CApBoyMVxSeBdPK99