軽井沢別荘の歴史02「ウランバーナの森」奥田英朗

2019.06.18

モリノイエ軽井沢 編集室

表参道と軽井沢のアトリエで、別荘や住宅の建築設計を中心に活動する私たち〈モリノイエ軽井沢〉は、“都会暮らし、森暮らし。”という新しい日本の暮らし文化をつくることを大切に、連載「軽井沢別荘の歴史」で、軽井沢の別荘建築や山荘暮らし、建築家の図面や作家の芸術作品、写真集などを紹介していきます。

01「ウランバーナの森」奥田英朗
 
講談社(2000/新装版2017)

舞台は1979年の夏、軽井沢。世界を熱狂させたポップスター・ジョンは、愛する妻と息子との静かな隠遁生活を愉しんでいました。しかしある日突然、強烈な腹痛に襲われることに。不安を抱えて妻に諭されるまま、深い森にぽつりと佇む医院に通うことになったジョンは、腹痛に悩まされながら、不思議なできごとに出会います。過去との対峙、これまで出会ってきた人々との再会、矢ヶ崎川での神秘的な体験......。そうして、人々と言葉を交え、軽井沢の森に暮らすひと夏を巡り、ジョンは喪失と再生を歩んでいきます。

morinoie DIARY連載「軽井沢別荘の歴史01」で紹介した写真集「John Lennon Family Album」。ここでは、1977年から1979年にかけて毎夏、軽井沢を訪れていた〈the Beatles〉のジョン・レノン、妻のオノ・ヨーコと息子のショーンの“ありのままの家族の姿”が残されていますが、実のところ本書「ウランバーナの森」は、そんなジョンがどんな生活をしていたのだろうか?と妄想を膨らませた奥田英朗のデビュー作。そう、主人公のポップスター・ジョンとは、まさに“彼”のことなのです。
そんな奥田英朗のウィットとユーモアにあふれる設定もさることながら、あたたかな心の交流を言葉にする奥田文学からは、笑いと身近な人へのおもいやりを知らされて、大切な人と過ごす森でのひとときが、もっと大きな喜びになっていくことでしょう。