人と建築をつなぐもの

2020.07.03

モリノイエ編集室

旺盛な緑を臨む山荘の一角に、読書を楽しむために設けられたライブラリースペース。 
本棚のコレクションの中から、気の赴くまま一冊を手に取り、腰を下ろして、ページを開く。 
 
ベンチに張られた、苔生した軽井沢の石壁を思わせる、落ち着きある色遣いのファブリック。 
柔らかでありながら堅牢さをたたえる張地が、ゆったりと流れる贅沢なひとときに、一層の彩りを与えてくれます。 
 
今回、山荘のベンチの張地として選んだ「Safire」は、「シェニール」と「ブークレ」という、2種類の異なる糸を使って織り上げられた、手織りのような豊かな表情と、ふくよかな独特の心地良い手触りが楽しいファブリック。 
 
■シェニール:一度仕上げた織物を縦糸に沿って裁断し、それをねじって作った糸 
■ブークレ:細い芯糸に、ループができるようにソフトな糸を撚り絡ませた糸 
 
1831年創業のドイツの老舗ファブリックメーカー「SAHCO / サコ」のものです。 
 
SAHCOは2018年、デンマークのファブリックメーカー「Kvadrat/クヴァドラ」に買収され、現在はインテリアブランド「Molteni / モルテーニ」のクリエイティブディレクターとしても知られるベルギー人の建築家兼デザイナー ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンをアートディレクターに起用。 
 
SAHCO本来のエレガントなニュアンスを生かしながら、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンのミニマルなエッセンスを取り入れ、クラッシックとコンテンポラリーを融合させた意欲的なコレクションを展開しています。 
 
上質なファブリックに出会い、そのストーリーに触れることで、“マテリアル(素材)としての布”ではない、それ単一で価値のある“プロダクトとしての布”、そして普段意識することが少ない「テキスタイルデザイナー」という存在へのまなざしが生まれます。 
 
人と建築をつなぐものとしてのファブリック。 
そしてここからも、現代に生きる私たちの営みすべてが“デザイン”にあふれていることに、改めて気付かされるのです。
 
… 
 
余談ですが、似た意味合いで使われることが多い「ファブリック」と「テキスタイル」には、次のような違いがあるそうです。 
 
※ファブリック…「布・織物」の意で、主にインテリア業界で使われ、また加工後のものを指すことが多い 
※テキスタイル…「布・織物」の意で、主にアパレル業界で使われ、また加工前のものを指すことが多い