コージーコーナー

2020.04.10

モリノイエ編集室

“役に立たないものや、美しいと思わないものを、家に置いてはならない” 
- ウィリアム・モリス(英国の詩人・デザイナー・思想家) 
 
オフィスに行かずに仕事をする、いわゆる在宅ワークという働き方が今、急速に広がりを見せています。 
(モリノイエ編集室の私も、この記事を自宅で書いています) 
 
「職住近接」ならぬ「職住一体」。 
 
ONもOFFも、“家”がすべての起点になる。 
ライフスタイルの大きな転換点です。 
 
… 
 
今から4年ほど前、外苑前にある北欧デンマークの家具ブランド、カール・ハンセン&サンのフラッグシップストアで、椅子研究家の織田憲嗣(おだのりつぐ)先生のお話を聞く機会がありました。 
 
織田先生は、インテリアの世界では知らない人がいない、というくらい有名な方。 
1300脚を超える椅子を始め、長年独自に収集・研究されてきた、20世紀のすぐれたデザインの家具と日用品群は『織田コレクション』と呼ばれ、近代デザイン史を知る上での貴重な資料として世界的にも高く評価されています。 
 
その時、織田先生からお話があったのが、「コージーコーナー」のすすめ。 
単語だけ聞くと、有名な洋菓子店が頭に浮かびますが、ここでは全く違った意味。 
 
「コージー/cozy」とは、こじんまりとして、温かく、心地よい、というニュアンスの言葉。 
そんなコージーな場所を自宅の中に作ってみませんか、という提案でした。 
 
そのための材料は4つ。 
 
・イージーチェア(ラウンジチェア) 
・コーヒーテーブル(サイドテーブル) 
・フロアランプ(テーブルランプ) 
・ラグ 
 
人によってはここにお気に入りのクッション、冬場であればブランケットやスローが加わります。 
 
場所はリビングの隅、階段下、どこでも構いません。 
これらの材料を1ヶ所にまとめて配置するだけで、コージーコーナーの出来上がり。 
 
自宅に書斎や自室がなくとも、畳1〜2枚ほどのスペースさえあれば、心から落ち着ける自分だけのお気に入りの空間を作ることができるのです。 
 
そして織田先生は同じ会で、コージーコーナーに限らない、ものに対するあるべき姿勢として、こんなこともおっしゃっていました。 
 
「“消費者”ではなく“使用者”として、“間に合わせのもの”ではなく“永く愛せるもの”を」 
 
自分の美意識に適ったものを妥協なく選び、長く使い続けていくこと。 
 
生活のありようがめまぐるしく変化していく中で、いつの間にか置き去りにされていた、暮らしの原点である“家”。 
そこで過ごす時間をより良いものにしようとする姿勢、暮らしの道具の美しさに目を向ける織田先生のまなざしが今になって、いえ、今だからこそなのでしょう、ふと思い起こされました。