自分の仕事に
満足したことは、
一度もないよ

黒岩さん親子
職業:大工

モリノイエ partners

Vol.03

今回、お話を伺ったのは、モリノイエの現場で、
いつもお世話になっている大工の黒岩親子。
ノミやカンナを使った手仕事が得意な大工さんで
精度の求められる木材の加工仕事や、
内壁や柱の美しい仕上げを任せたら超一流です。

中学を卒業して大工の世界に。
ずっと木をいじっている。

この世界に入ったのは昭和33年。中学を卒業してすぐだったかな。知り合いの親方のところに年季奉公、つまり、住み込みで働き始めたわけ。でも、いい思い出なんかひとつもないよ(笑)。とにかく仕事には厳しい親方でね。1週間、いや1ヶ月間ひたすらカンナがけをやらされていたこともあったね。ただ、まあ、木をいじるのは好きだったんだろうね。木って、やり方によってどうにでもカタチを変えることができるからね。指を切ったり、屋根から落ちたり、ケガもいろいろしたけど、人生ずっと木をいじっている(笑)。親方のところを卒業した後は、住宅の大工をやったり、店舗をやったり。そうそう、新宿のルミネをつくりに東京に行ったこともあったよ。あと、子どもが小さい時は自宅を工場にして木彫の家具作りもやっていたね。そして、今では自分のせがれと一緒に大工をやっているんだから。人生、面白いもんだよね。

自分の仕事に満足したことは、
一度だってないよ。

モリノイエの仕事はやりがいがあるね。今どき、木材をこれだけいじらせてくれる現場は少ないからね。たとえば、壁や天井に等間隔に化粧板をはめていく仕事があるんだけれど、これ、図面通りにはなかなか仕上がらないんだよ。化粧板と化粧板の間を5ミリ間隔で開けていってね。最後、壁と壁や壁と天井の境となる部分をどれだけキレイに処理できるかが、大工の腕の見せどころ。現場で木と向き合って「どうしようかな」と考えながらノミやカンナで微調整を施していくんだね。ちなみに、仕事場に持っていく道具箱にはノミだけで10本近く入っていると思うよ。10年以上使うと、だいぶ短くなってくるんだけど、それを研ぎながら上手に使いこなしていけるかどうかも職人の腕しだいだね。んっ、仕事をしていて一番うれしい瞬間?それは自分の仕上げた仕事を、お客さまにほめられた時だね。でも、正直73歳になる今まで、自分の仕事に満足したことは一度だってないよ。

親子で一緒に働けるのは、
やっぱりうれしいよ。

今、一緒に仕事をしているのは4人いる子どもたちの中でも一番下のせがれ。もともと長男が手伝ってくれていたんだけど、ケガをして大工を辞めちゃってね。1番下のせがれは小さい頃から家具作りの工場によく入り込んで遊んでて、中学生の頃には仕事を手伝うようになっていたんだね。まあ、ここだけの話だけど、親子で同じ現場で一緒に仕事ができるのは、やっぱりうれしいよ。直接ほめることはないけれど、最近は大工としての腕もけっこう上達しているし、オレ、時々せがれに怒られているからね。親父としては、楽させてもらってると思うよ。それにしても、本当にこの仕事は自分の腕一本で勝負できるし、面白いよ。手作業だからこそできることもあるし、職人としての意地もある。もっと木をいじっていたいね。

―息子さんにも、仕事のこと、父親のこと、聞きました。

幼稚園児の頃から
親父の背中を見て育った

仕事にうるさい親父ですね。昔ながらの職人。仕上がりの精度にはとことんこだわります。あと、気が短いから昔は1から10までやることすべて怒られていました。でも、「なぜダメのか」ということは一切教えてくれない。「それは、自分で考えろ」と言われ続けました。仕事のやりがいを感じるのは、やっぱり自分がつくったものをお客様が喜んでくれた瞬間です。えっ、親父と一緒ですか?(笑)だけど、まだまだアナログな手仕事では親父にちっとも勝てないですけどね。今どき、おかしいくらい手仕事にこだわっている人ですから。親父と同じ現場で一緒に仕事ができるのは、息子としてもうれしいですよ。現場で話すのは、ひと言ふた言くらいですけど。幼稚園児の頃から親父の仕事する背中を見て育っていますからね。親父に対してメッセージですか?う~ん。少しでも長く一緒に仕事しようね。面と向かっては言えないですけどね。

休日の過ごし方は?

親方に尋ねると「妻と一緒によく買い物に出かけるね」という答えが返ってきた。一方、息子さんはというと…、「休日の日は朝から晩まで寝ていることが多いですね」とのこと。仕事する姿はそっくりでも、休日の過ごし方は対照的な黒岩親子でした。

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