薪ストーブは道具。
もっと気軽に使い、
楽しんでほしい。

塩谷さん(49歳)
職業:薪ストーブの販売

モリノイエ partners

Vol.02

今回、お話を伺ったのは、薪ストーブの販売を行う塩谷さん。
薪ストーブのプロであることはもちろん、
自分自身がアウトドアを心から楽しみ、
その経験や生き様が仕事にも表れている素敵な方です。

自然の中で遊ぶことも、
焚き火遊びも大好きだった

小さい頃からよく自然の中で遊んでいました。登山やスキー、釣りなどが大好きで、キャンプもよくしていましたね。学校を卒業した後は、自然好きがこうじてアウトドアショップに就職しました。しかし、数年働くうちに、アウトドアショップではなく、もっと自然の近くで働きたいという思いが強くなってきたんです。自分の子どもを田舎で育てたいという思いも大きかったですね。そこで、全国の地域産業や農業、漁業などに転職できないかと真剣に探し回ったのですが、なかなかいい働き口は見つからず…。その頃に自分が働いているアウトドアショップで商品の暖炉を眺めている時に、「これだ」とひらめいたんです。もともと焚き火遊びも大好きでしたしね。そうして薪ストーブを扱う今の会社にIターンで転職することを決めました。

薪ストーブは暖を取るもよし、
調理に使うもよし

薪ストーブの魅力はいろいろありますが、まず、火を見ているだけで非日常の世界に入ることができます。さらに、薪割りの段階から夢中でのめり込んでしまうお客様も多くいますね(笑)。加えて、その暖かさが最高に気持ちいい。まるでお風呂に入った感覚で、とろーんとした暖かさがある。薪ストーブは遠赤外線効果があり、体を芯から暖めてくれます。出た熱がどこまでも届くので、空間や壁を上手く使えば家中を暖めることができます。お客様の中には床暖房と薪ストーブの両方を設置したいと考えるお客様もいらっしゃいますが、薪ストーブだけで十分のケースがほとんどです。それに火があるところに人は不思議と集まってくるので、それぞれ別のことをしているのに家族団らんの空気ができあがるから面白いですよね。また、薪ストーブは暖を取るためだけの道具ではありません。たとえば鶏を丸々調理するといった本格的なオーブン料理を気軽に楽しむこともできます。つい薪ストーブは嗜好品という考え方をしてしまいがちですが、もっと日常的に、生活の中での道具として使い倒していただけると嬉しいですね。


薪ストーブは3回暖まると言われます。薪を割って暖まる、運んで暖まる、火をつけて暖まる。

初めて火がついた瞬間の
笑顔がいちばんの喜び

実際の仕事では、私たちはお客様先に新品の薪ストーブを設置して最初の火を入れる際に“火入れ式”というセレモニーを行います。薪ストーブの両サイドにお酒や塩を盛り、薪を組んだ後、お客様自身に最初の火を入れてもらうんです。なかなか普段の生活では体験できないことなので、お客様も緊張と期待の入り混じったような顔をしています。それが、火が入った瞬間、笑顔に変わる。ご年配の方でも、子供のような無邪気な顔に変わるんです。その嬉しそうな表情を見ると、この仕事をしていて本当によかったと思いますね。さらに、薪ストーブは火をつけることはできても、きちんと使えるようになるまでには多少の経験や技術が必要です。そこがまた面白い。火は温度によって燃え上がる高さも色も変わります。つまり、火には表情があるんです。赤からオレンジ、黄色、そして青い火に変わり、いよいよ釜の中が高温になってくると、煙はガスになり、火は薪から離れて燃え、それがオーロラのように映ります。こうした表情の変化を判断できるようになってくると一人前。どんどんはまっていくと思います。

薪木として針葉樹を使う
仕組みを広めている

さて、火の話の次は薪の話をしますね。じつは、日本ではつい最近まで“針葉樹は薪として使ってはいけない”といった間違った常識が広まっていました。たしかに広葉樹に比べると、油分が多く、燃えるスピードは速いのですが、それは薪の太さを調節すればすむ話だし、そもそも針葉樹は10年ほどで成長するのに対し、広葉樹は燃料として使えるようになるまで25年を要します。そう考えると、針葉樹を積極的に使う方が理にかなっているんです。それに、広葉樹の中でも最も多く薪木として流通していたのはナラの木なのですが、このナラの木の一番の原産地は福島だったんです。それが大震災で壊滅的な打撃を受けてしまって…。だからこそ、私たちの会社では針葉樹を薪木にして、それをプロパンガスのようにお客様先に宅配で届けるサービスを開始し、普及させようとしています。さらに、そこで得たお金で次世代の森を育てていく活動にも力を入れているんです。自然の恩恵を受けるからには、自然に対する知識を深め、自然のサイクルに沿う必要がありますからね。

薪ストーブを普及させ、
日本の森を元気にしたい

今後の目標については、薪の話とつながるところも多いのですが、もっと日本の森林を活用していくサイクルをつくることが大切だと考えています。私自身、キャンプなどを通じて森に触れる機会が多く、最近は森の様々な変化を感じているんです。たとえば、広葉樹が減ることで土が弱くなっている。さらに、川の生き物の種類も減っていますね。川は、森を人間の体に例えると動脈血管にあたる存在。そんな風に森が元気をなくしているのを肌で感じるだけに、何とかしたいという気持ちもいっそう強くなります。そして、その解決策のひとつとして薪ストーブをもっと普及させたいですね。より多くの人が薪ストーブを使うようになれば、自然の魅力を身近に感じるようになる。さらに、自然に対する正しい知識も身についていくはずです。そもそも、火を使える生き物は人間だけですし、自然を資源として使っているのも人間だけです。そうした人間が楽しみながら自然と共存できるきっかけを、薪ストーブを通じてつくれたらいいですね。

休日の過ごし方は?

休みの日もアウトドアを楽しんでいる塩谷さん。家族で出かけたり、友だちと出かけたり、時には自分ひとりで自然の中に身を置くことも少なくないそうです。そうした自然での遊びを通して四季を感じ、自然を感じることで、学ぶことも多いとか。ただ、いちばん大切なのは「楽しむこと」だそうです。まさに、休日の達人です。

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