都会と森の道中で

001「偶然に」

東京と軽井沢。車を走らせる。
ハンドルをにぎり、景色を眺める。
ノートに何かを書き留めることもできなければ、
何かを調べることもできない。
だけど、それがよかった。
このときばかりは、一人になって、ただあてもなく、
考えごとにふけってみるようになった。都会と森の道中で。

最近は、特別なものを追い求めるよりも、たまたま出会ったものごとをゆっくり、じっくりと見つめるようになった。すでに決められた何かの上を歩くよりも、未知なる何かに身を任せてみるのは、なかなかいい。

行き先を決めないドライブで、ふっと気持ちのいい景色に出会えたり、出会った人との会話に平穏な気持ちで耳を傾けてみたり。自分の中の凝りがほぐれ、見たこと、聞いたことの輪郭、というよりももう少し深いところに気がつくようになった。

そして、それが仕事にも活きている。たまたまを待っているわけにはいかない毎日の速さにも、流れを与えてくれた。偶然とは不思議なものだなあと驚く自分が、懐かしくも思えてくる。

なんてことのないひと言をあとで思い出したり、何気ない風景を設計の時にふっと思い出したり。一見すると、理由のないこと、根拠のないことのように思えるあの日のことは、今につながる伏線なのかもしれない。

次はどんなことに出会えるだろうか。どうやら楽しみが増えてしまったようなのです。

モリノイエ編集室

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