Blog

大人修行中*モリノイエ軽井沢の本棚

小学生の頃は春休み、夏休み、冬休みと
親父の建築会社で現場に出て仕事を手伝っていました。
好景気に沸く日本でしたから忙しく、
仕事も山のようにあったのを子供ながらに覚えています。

場所は東京の下町。
自宅兼会社の場所から半径10キロメートル程度のエリアの
空き地に家がタケノコのように建っていく。
そこが仕事場です。

忙しいので朝早くから、
夕方遅くまで手を動かさないとその日の仕事が終わりません。

冬休みの現場仕事は寂しさとの戦いです。
なんといっても陽が落ちるのが早い。
現場は投光器をつけて昼間のように明るい。
活気に満ちていますが、
小学生の私は早く帰って、
暖かいコタツに肩まで入ってテレビを見るのが楽しみでした。

そんな現場の寂しさを紛らわしてくれるのがラジオ。
澄んだ音質のFMラジオではなく、
雑音混じりの音が流れるAMラジオです。

ヒット曲を流す番組、
ゲストを迎え対談する番組などの形式は今でもありますが、
パソコン、iPhone、電子メールなど無い昭和の時代は、
リスナーがハガキを投稿して、
パーソナリティーがそれに答えるというコーナーが多かった。

基本的に現場でのラジオの役割は時計代わり。
帯番組がほとんどですから、
そのコーナーが始まれば昼休みや
三時の休憩などの合図になるのです。

決まって夕方になると流れてくるテーマソング。
♪ダイヤル ダイヤル ダイヤル ダイヤル〜回せば〜♬
確かこんな感じ。
子供が電話をかけてきて、素朴な日常の疑問を
大人(著名人)に投げかけ、
時には淡々と、時には四苦八苦しながらも
わかりやすく答えるという番組構成。

確か生放送のように記憶している
この番組名は『子供電話相談室』。
当時は年の差が自分とそれほど無い『子供』の質問が
バカバカしく思え、
そんなに好きな番組ではありませんでしたが、
最近、部屋の棚から手に取った本のまえがきに、
この番組のことが短くふれられていました。

その日の子供の相談内容は、
『どうせ死ぬのに、どうして生きてるの?』
出演者の大人(著者)は絶句したという。

私は今の仕事を通じて、多くの大人の方々と会話をします。
人、家族には、それぞれに歴史があり、
必ずしも平坦な道だけを歩んできた人など
一人もいないことがわかります。

『そう、みんなどうせ死ぬ。それは仕方のないことだよね。
どうせ死ぬのだから、
お父さん、お母さんからもらった命を大切にして、
暗く考えず、一生を楽しく正直に生きようと頑張る。
それをするには、
元気よく学校に行く。
興味のあるものが目の前に出てきたら、
とことん知る。
好きな人がいたら好きだということを伝えて
ともだちになる。
森に入って目を閉じてみる。
いつもは聞こえない音が聞こえてくるのを知る。
世界は知らないことだらけだと知るよ。
だから、
知ったことがあったら周りの人に教えてあげよう。
素敵な人からもらうのは勇気だということも知るよ。
勇気をもらったら、これも周りの人にあげよう。
それを繰り返していると、
今は見えない素晴らしいものが見えてくる。
そうすると、どうして生きてるかがわかるよ』

私が大人(出演者)ならば番組が時間内に終わっていないだろう。
まだまだ大人修行中。。。

軽井沢のモリノイエにある本棚から
ひとつかみした文庫本の著者は『永六輔』、
本のタイトルは『大往生』。
見えるところに置いておきたい一冊。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

ここには数回訪れたが、
やはり秋の午前中、それも早朝が良い。
様々な黄色がある森に朝露が眩しく光る。

テラスに出るドアハンドルが
鈍く輝く。
オリジナルと信じて
触ってみると歴史を感じたりもする。

北米のペンシルベニア州
ピッツバーグから南東に80kmの森の中。
近代建築の三大巨匠の一人
フランクロイドライト晩年の傑作『落水荘』。
当時、人生のどん底にいた彼が
再び光のあたる世界へ復活することができた
代表作の一つである。

後世に名を残す偉大な建築家も
素朴な疑問を子供の頃に持っていたに
違いない。